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東京大学文科3類ドイツ語クラス卒業生の共同ブログです。個々人が、それぞれに思うことを述べていきます。

それでも男子は赤いランドセルを使えない

 最近のランドセルは色に縛られなくなってよいことだなあなどと思っていた私がバカだった。
 例えば有名メーカーのウェブサイトを見てみると、ランドセルのページはまず「女の子向け」「男の子向け」の二択から始まる。「女の子向け」は赤だったり水色だったり茶だったり紺だったりとカラフルで、かわいらしい刺繍などの装飾も多い。「男の子向け」も黒に限らず青だったり銀だったり色のバリエーションはそれなりにあるが、圧倒的に赤だけは避けられている。柄や模様は入っていないものが多い。
 結局、女=赤/男=黒みたいな固定的な色の縛りがなくなったとして、それはそれだけのことだった。色を介さずに性別の規範が直接デザインに反映されるようになっただけ。女はオシャレで美しくてかわいいものを求めなければならない。男はそのような「女らしい」ものを選んではいけない。もちろん全てのランドセルがそういうコンセプトなわけでもなくて、中には性別を全く意識しないデザインもある。それでも、最初の選択肢は「かわいい女の子向け」か「かっこいい男の子向け」として提示されるわけ。

 

 幼稚園のころ、赤は当然女の子の色でしょ?というようなことを言って、そんなことはないよと母親に返され、納得がいかなかったことを今でも覚えている。たった4年か5年この世で生活しただけで、世の中の規範とされているものは、既に世の中で規範とされているという理由だけで、正しいものとして我が身に吸収されてしまうのだ。そういう常識を疑うことを知るまでに私は十何年か要した。疑えるようになるまでにはまだかかっている。
 おそらく今「女の子向け」のかわいいランドセルを使う男の子は周りに何かしら言われるだろうし、そういったかわいいものを使いたくない女の子は選べるランドセルの幅がぐっと狭くなるだろう。そういう常識になっているんだものな。ランドセルが規範を再生産しているのではないかと思うと気が重い。

 男と女とその中間とがあればいいという話ではなくて、まずそもそも男か女かというカテゴリーを作ろうとするのがいい加減わずらわしい。「女」と「美」とか「愛らしさ」みたいな要素を一本線で結ぶような常識はぶっ壊れろ。男とか女とか関係なく、ただ望む人が望む時にかわいさと結びつけるようになればいいのに。