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東京大学文科3類ドイツ語クラス卒業生の共同ブログです。個々人が、それぞれに思うことを述べていきます。

私的吉祥寺の喫茶店レビュー

 吉祥寺はとても混む街だ。文京区に引っ越してそれがよくわかった。

 市部で育った私は、引っ越す前、東京23区のど真ん中である文京区などは常に人でごった返しているものだとばかり思っていた。吉祥寺はいつも人が多いが、都内はもっとひどいのだと思っていた。

 事実は違った。休日昼間の吉祥寺駅周辺の混み具合に勝てるのは、文京区では東京ドーム界隈くらいではないか。引っ越した後ふと吉祥寺に寄り、こんなに混んでいるところで私は何年も本を読んだりレポートを書いたりしていたのか、と愕然とした。

 そう、私にとって大学・大学院時代の読書のホームグラウンドの一つは吉祥寺だった。読書に適した喫茶店は限られる。数年の蓄積を駆使して、いくつかの喫茶店をレビューしてみよう。

 先に断っておくが、私は行動範囲を広くとるタイプではない。一つ適切な場所を見つければ、そこに繰り返し通うタイプであるため、多くの店を知っているとは言い難い。私のレビューに価値があるとすれば、安価で、入りやすく(=個人経営ではない)、静かな場所を紹介しているという点においてであろう。

 とはいえ途中からただの喫茶店語りになっている部分もあるので、そこはそういうセクションなのだと思って読んでいただきたい。

 

1 ドトールコーヒーショップ吉祥寺元町通り店

https://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13171400/

 

 ここは、雰囲気は悪くないのだが、どの時間帯をとってもあまりにも人が多すぎる。2年ほど前の改装で客一人あたりに与えられる机の面積が減った。快適に作業をすることができるような場所ではない。

 加えて、私が前期課程学生だった頃は勉強に寛容だったのだが、四年生頃から「11~18時には席を譲ってください」というような注意書きが置かれるようになった。

 書いていて思い出してきたのだが、店内ミュージックのボリュームが大きすぎて基本的にあまり集中できない。

 その他に付随して思い出されることは、常に向かい合って座っている一組の老夫婦がいることだ。家でじっとしているよりは、と思って出てきているのだろう。基本的に11時頃から、長い時は閉まるまでいる。そこの椅子で居眠りなどもしているのだ。

 脱線するが、喫茶店で居眠りしていいのかということに関して、議論はわかれるところであろう。私はそれはさすがに「なし」なのではないかと思っている。喫茶店は寝る場所ではない。一律に声を大にして禁ずると窮屈になるから、「居眠り禁止」という張り紙を貼ってほしくはないが、自分が店員だったら居眠りをする客を不快に思うだろう。居座ること自体の不快感もさることながら、喫茶店が公共空間であるが故に保たれている節度が揺らぐことにより、空間が心地よいものではなくなるような気がするからだ。

 

2 サンマルクカフェ吉祥寺北口駅前店

https://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13102208/

 

 ここも店の雰囲気は悪くないが、人が多すぎる。とはいえ上述のドトールほどではない。3階の喫煙室に陣取れば、休日でも午前11時半くらいまではワンフロアに人が数人の状態で快適に過ごせる。

 平日はビジネスマンが多い。就職するまで、「この人たち働いているはずなのになぜこの時間に喫茶店に??」と常に疑問を抱いていた。営業の人が訪問先と訪問先の合間に休憩しつつ、PC等で業務をこなしているというのが正解だろうが、どっかり座って新聞を広げながら「すいません、いま大急ぎで得意先に向かっている最中で〜〜」とか言っている人もいたな。

 喫茶店に来る客とその目的は本当に様々だ。それを見るのは楽しい。何より、通常の社会生活の範囲内では見ることのない他人の私的な生活が微妙に垣間見えるのがよい

 

3 エクセルシオール吉祥寺サンロード店

https://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13044576/

 

 ここもちょっと人が多すぎる。とはいえ、3階の喫煙室なら午前12時くらいまでは空いている。カップルや商談のサラリーマンが多く、店内は人が少なくても常に誰かしらの話し声が響いている印象。

 3階は自動ドアがうるさくてあまり集中できない。人が出入りするたびにブーンとなるので気が散ってしまう。しかし自動ドアでなくとも、うるさいかな。そんなに広くないことが問題か。3階は全面的に喫煙エリアなのだから、そもそもドアいらないと思うんだけど。

 自動ドアといえば、永田町のエクセルの喫煙室も自動ドアがうるさかった。エクセルの自動ドアはダメだ。

 禁煙の2階はすぐに埋まる。そこまでうるさくないが、朝を除き常にやや混んでいる吉祥寺としては普通の喫茶店。計算問題とかをがーっとやったり、単語をひたすら書き出すような勉強には適しているかも。1階は人の出入りが激しすぎてもはや道の延長、もしくはフードコートに近い。とても勉強をするような環境ではない。

 総じてこのエクセル、店内が明るく、利用者は吉祥寺らしい華やかなファッションを身につけており、おしゃれな街の賑やかな喫茶店という感じで、20分程度友人ととどまるぶんにはよい。読書には不向き。

 

4サンマルクカフェ吉祥寺元町通店

https://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13026682/

 

 ここの3階は大正解。休日も13時ほどまでフロア全体の利用者が数人を超えない。完全に穴場だと思う。しかし、最近はありえないほど声の大きいパワフル系高齢者の集団(どうやらパチンコの帰りに寄ってきている?)が思い出したように数日に一度11時頃に到来するので、その時は2階や喫煙室の方に逃げ込む必要がある。

 環境としてはよいのだが、このサンマルクのカフェテーブルはほとんどすべてガタガタいう。どうにかならないかなあ本当に。サンマルクのカフェテーブルは地面と接する部分が点ではなく円であるため、経年変化により少しでも歪めば幾らかの部分が地面から離れることになってしまう。

 サンマルクに限らず、チェーン系の喫茶店のテーブルは総じてよくないし、大抵小さい。特に客が多い店は、収容人数を多くすることと引き換えに一人当たりのスペースを節約している。空いている喫茶店を見分けるこつは席数やテーブルの大きさである。

 

 ということで、勉強する場合、私は基本的にサンマルクカフェ吉祥寺元町通店を使っていた。

 しかし少しお金がある時なら、話は別である。以下は多少お金をつかってもいいかなと思う時に入る喫茶店。

 
5コメダ珈琲吉祥寺ダイヤ街店

https://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13156365/

 

 利点は、入ってしまえばある程度のスペースが確保されること。コメダコーヒーの最大の強みはモーニング他名古屋譲りの以下略ではなく、単純に机がある程度大きいことだ。空いているときに要求すれば一人で四人用の席を使える。色々な書類を広げることができる。Wi-Fiもある。

 しかし、混雑するので、そもそも人が少ない場所がいいなら前述のサンマルク一択。もうある程度書くことが決まっているレポートをやっつけるべく、いろいろ広げたい時に利用できる。

 

6シャノアール吉祥寺店

https://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13015926/

 

 若干入りづらさはあるがいたって普通の喫茶店。しかし騒音が気になる。手前は客の入店を知らせるアラートがうるさく、奥は厨房の音がうるさい。正直勉強には不向き。

 
7椿屋珈琲花仙堂

https://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13005861/

 

 よい。珈琲一杯700円くらいするので、気軽には入れないが、いつ言っても割と大きめなテーブル席がある。大抵静か〜ややうるさい程度だ。大混雑地帯の吉祥寺におけるオアシス的存在。

 
8ルノアール吉祥寺店

https://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13087004/

 

 こちらも椿屋花仙堂と同様。ただし駅近のため、お金を使ってもいいときは、主にこちらを利用していた。ただ、机と椅子にガタがきており、やけに低い。書き物をしたりすることのできる机ではない。しようとすると微妙に無理のある姿勢になってしまい、長時間はできない。

 ハイカルチャーなマダム達や壮年の経営者風の男性ら、リタイアしたアッパーミドルクラスの人々の溜まり場。休日昼間でも確実に座れる。

 結局、お金を出せば吉祥寺ほどの混雑地帯でもある程度の環境は得られるのだ。

 

 

「居心地のよい喫茶店」は幻想か

 

 書き出しながら思ったのだが、自分は居心地のよい場所を求めて渡り歩くということを継続的にしてきたのだなと思う。居心地のよい場所への執着心は、他の人より強いのかもしれない。

 それでは、それを見つけることができたのか?どうだろう。サンマルク吉祥寺元町店は、一つの正解であったと思う。しかし、そこに安住できたかと言われれば違って、大抵3時間もいれば飽きるので、別の場所に移動していた。結局、私はどこの喫茶店でも満足するということはないのだな、と思う。

 

 「居心地のよい喫茶店」とは、私の頭の中だけにある一種超越的な場であるのかもしれない。だとしたら、それを外の世界に求めるのは間違っているかもしれない。

 だとしても、「自分に取って居心地のよさとは何か?」というような内省は、居心地の悪い喫茶店で行えるようなものではないのである。都会の喧騒から退避できるスペースは依然私に取って重要だ。そういった場所であればこそ、私は自分の頭の中だけにある「居心地のよい喫茶店」を求めての新たな探求を開始することができるからだ。