On the Homefront

東京大学文科3類ドイツ語クラス卒業生の共同ブログです。個々人が、それぞれに思うことを述べていきます。

一年ぶりに考える、私が文三だったわけ

 将来の夢ってはっきり決まっていたことがない。やりたいことを絞るには、世の中には知らないことが多すぎて、将来なりたい仕事なんてまだまだ選べるわけがないといつも思っていた。おそらく道を一つに定めていた方が何かと楽にやっていけたのだろうが、決めようと思ったところで決められた試しがないので、そのままここまで来てしまった。今ですら先のことは何も考えないで生きている。来年どうしているかも分からない。

 小学生のとき将来の夢を発表しなければならないことがあり、困った私は半ばやけくそで作曲家と書いたのだった。ピアノを習っていて、テキストに載っている曲を真似してドレミファソしか出てこないメロディを五線譜に書きためたりしていたのだ。結局その話はそれ以上になることはなかったのだけれど、最近になってちょっとパソコンをいじれるようになり、記憶の中の曲を思い出して打ち込んで、音符を加えて曲らしい体に完成させるというようなことをしている。そうしてイントロから各パートのそろった曲を自分で作って自分で聞いていると、それがびっくりするほど楽しくて楽しくて、ああ私はこういうことがやりたかったんだなあと思う。素人のお遊びとはいえ、あのときの夢を一つ叶えられたような気持ちなんだ。

 

 そう思えば将来の夢なんてほんとはずーっと決まっていて、それに向かってああでもないこうでもないしていたというだけのことなのかもしれない。道なんて本当は最初から一つしか見えていなかったのに、ただそれが実現させるにはあんまり茫洋とした話だから、決めきれないという形でごまかしてきたのだ。

 要するに、ずっと何かを作りたいと思って生きてきた。何か、というのはおそらく形のないもので、具体的には文でも絵でも音楽でも、マンガでも論文でもウェブサイトとかでもなんでもいい。なんでもいいから何か作っていたいんだよなあー。……という話を先日ちらっと江藤にしていたら、文三に来て文学部に進むような人はわりとみんなそういう志向があるのかもね、と言われてなるほどと思った。みんなそういうものか。何かを作りたいなんて、思うだけなら誰でも思いそうなことを、マジにしてしまうようなやつは、確かにそういう分野の学問にたどり着きがちかもしれない。