On the Homefront

東京大学文科3類ドイツ語クラス卒業生の共同ブログです。個々人が、それぞれに思うことを述べていきます。

東北出身者は検定試験にもケチつけられなきゃならんのか

 

平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験問題

平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験問題

 

 

日本語教育能力検定試験、つまり日本語母語話者でない人に日本語を教えるための試験、の平成29年の問題を見ていたのですが、アコモデーション理論(聞き手によって話し方を調節すること)を問う問題で選択肢の一つにこんな文章があって、

 

東北出身者が、方言使用に否定的な友人に対して、方言を強調して話す。

 

あ、出たーーーーーー

 

これを見た瞬間、現実の「東北出身者」つまり私の頭の中では、おそらく「方言使用に否定的な友人」は大阪出身者とか福岡出身者に対しては登場しないんじゃないかなあ──もちろん、そういう人間が実在しない、あるいは少ないだろうという意味ではなくて、こういう設問を作る人がそこに登場させようと思わないだろうという意味で──とか、そういう友人に対して逆にあえて「方言を強調して話す」なんて意地悪いことをするのはどごの田舎者なんだべなーとか、なんか試験とは関係のないあれやこれやのことがたちまちのうちに駆け巡ったのであった。

出題意図は分かるんだけど、あえて「方言使用に否定的な友人」を設定しておいてその上でわざわざ地方名を特定して引き合いに出されるのってやっぱり東北なんだなあ、確かに東北の受験者数は少ないとはいえ全国でやってる試験なんだけどなあ、などと試験中に余計な感情を喚起させられる東北出身者がいることくらい、問題作るときに一瞬でも想像してくれなかったのだろうか。(この年の試験は総受験者が5767人、うち東北地区の受験者は133人とのこと)

 

同じ試験の聴解問題では例えば女性医師と男性患者の会話も出てきたし、そもそも日本語社会にいる日本語非母語話者について取り上げるような試験なので、決して「何も考えていない」わけじゃないと思うのだが、やはり平成30年になっても、性別やナショナリティについて「配慮しようという気がある」と思えるほどには、日本の中の各地方の扱いについてはそう感じられる場面は多くないと思う。それはまあ、出身地方というのは見た目だけでそれと区別できるような類のアイデンティティでもないし、おそらく全国どこに行っても男と女は同じくらいの割合でいるが、東北出身者の割合が多いのは東北地方だろうから、意識されにくいとしても理由は納得できるが。でも、だからって現状に納得してるわけじゃないし、だからこそ私は黙っていたくはないです。ちょっとしたことでもな。

 

似たような話をしている記事↓

地方コンプレックスが強すぎてつらい その1 - On the Homefront

地方コンプレックスが強すぎてつらい その2 - On the Homefront

夏休みは8月31日に終わらない - On the Homefront