On the Homefront

東京大学文科3類ドイツ語クラス卒業生の共同ブログです。個々人が、それぞれに思うことを述べていきます。

大急ぎロシア観光 モスクワその1

 この3月、初めてロシアに行った。
 突然思い立って1カ月くらいで準備して、わけもわからないうちに行って帰ってくるという慌ただしい一人旅だった。パスポートすら持っていなかった私がこうも急に海外旅行に行こうと思ったのも、一番の動機はロシア音楽にハマったからだ。もともとクラシックが好きだったんだが、ムソルグスキーに本気でハマってしまい、熱意のままに作曲家ゆかりの土地を訪れることを決めたのだった。
 モスクワとサンクトペテルブルクにそれぞれ2日ずつ滞在するだけ、という大慌てのスケジュール。私にとっては初めて足を踏み入れる大陸でもある。せっかくなので、かいつまんで思い出話を書いてみることにする。

 

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 モスクワは暗かった。というのは性格とか気運の話じゃなくて、物理的に明るさが少ない。
 まだまだ冬と言えるような季節だったし、吹雪いていて天気が悪かったのもあるけれど、まず屋外が暗い。薄暗い。そして屋外から見える建物の中も暗い。本当にこの中に人がいるのか?と思ってしまうほど、どの窓も暗い。宿泊先のホテルも暗い。ロビーの照明が暗い。朝も夜も暗い。どこに行ってもムーディな雰囲気というか、怖いというか、日本が明るすぎるだけなのだろうか、とにかくモスクワは暗かった。

 それから、モスクワはでかかった。確かにロシアはでかい。にしても、首都だけでその国土の大きさが分かったような気になってしまうほど、まずモスクワ市の面積が広い。そしてその市内にあるありとあらゆるものが大きかった。道路に面したマンションはどれも威圧感を感じさせるような年季の入った建物で、しかもこれだけ大きな建物がドンドン建ち並んでいるのに、空が限りなく広い。
 ロシアの空は埋まらない。日本のようにそこらじゅう山や海に囲まれて暮らしているのとはわけが違うのだ。どこまでも大地。広すぎる空の果ての方で、大地と街がグラデーションになって溶けているのがなんとなく見えるような気がする。
 ホテルの客室から見た風景も暗くて、でかい。初めて訪れるこの国の印象をばっちり固めるにはそれだけで十分だった。ここはロシアだ!!

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 そんなモスクワを自動車で移動したわけだが、とにかく道路の渋滞がすごい。みんな車を使いすぎだとガイドさんも嘆くほど、モスクワ市内は常に渋滞しているらしい。そしてちょっと道が空いたとか思うととたんに7、80キロでかっ飛ばし、そのスピードのままぬるぬると車線移動する。こんな隙間に入るのかと思うほどスレスレの隙間を縫うように走る。絶対に遠慮はしない。運転が荒いのはこの国だからというわけではないのかもしれないが、東京の路上教習ですらうんざりだった私は、後部座席に乗っているだけでいつ事故に遭うのかと気が気でなかった。
 それからもう一つ、モスクワの道路を走っている車は例外なく汚れていた。これは私にも理由が分かる。北国の春は雪解け水を跳ね散らかしてどこもかしこも汚くなるのだ。

 

 行きの飛行機が遅れていたので、初日はただでさえ忙しい日程がますます超特急の観光になった。モスクワ市内の主要な観光地を回って、あっという間に夜。次回につづく。