On the Homefront

東京大学文科3類ドイツ語クラス卒業生の共同ブログです。個々人が、それぞれに思うことを述べていきます。

マジョリティの言い分

 日曜朝のヒロインアニメはもう長いこと見ていないんですが、2018年に「子育て」がテーマの作品をやると聞いて黙って聞き流す気にはなれなかったので、全然関係ないんだけど思い出したことを書く。

 私はむしろ、マンガにしろ映像作品にしろ一昔前の子供向け作品ばかり好きで、今でもそういうのをよく見ているのだが、例えば90年代くらいまでの特撮ヒーロー番組なんかだと、子供を愛さない(母)親なんていない、というメッセージがしょっちゅう出てくるのだ。私自身はそういったメッセージを負担に感じたことはなかったのだけれど、そういうものを息苦しく思う人も決して少なくないということを、最近ようやく知った。私はたまたま、そういうところで描かれる理想の家族に近い形の環境で生きてくることができたので、おそらくだから何も違和感を感じなかっただけだった。

 今は、そういうメッセージ通りの家族で幸せな人はそれでいいし、そうじゃない家族でももちろんそれでいいのだ、と思っている。でも、例えば「家族は仲良くするものだ」なんて言われるのは苦痛だ、という意見に初めて出会ったときの衝撃は大きかった。そうできない、したくない家族もあるんだから押しつけるな、と言われて、じゃあ家族が好きな私の方が悪かったのか、古い価値観を温存するだけのダメな存在なのか、そうじゃない家庭に配慮して肩身を狭くして生きていかなければいけないのか、と感じた。嫌な親なら仲良くなんかしなくてもいい、と言っていただけで、別に仲の良い家族が仲良くしてはいけないと言われたわけではないのにね。家族を好きだと思うのは当然で、それが正しいことだと思って、なおかつそれを実行して生きてくることができた子供には、傲慢にも、それ以外の在り方を受け入れることすらできなかった。

 だから例えば、男女格差の問題でちょっと女性側が権利を主張すると途端に男性差別!と言い出したり、言い過ぎだワガママだと非難したりする人間が(女性にも)多いこと、ようやく腑に落ちたのでした。今まで我慢を強いられてきたマイノリティの人たちが声を上げたとき、そうじゃない属性の側の人が特権を侵害されたように感じて反発するという構図、反発する方がバカじゃねーのとばかり思っていたけど、自分だって結局同じことをやってたんだよなあ。そんなことにもずっと気付かずに生きてきてしまった。

 今はただ、少なくとも、女=母=子育て!母性愛!みたいな一方的なレッテル貼りで誰かを息苦しく思わせるようなことがこれ以上続かないような2018年になればいいなあと思う年の瀬なのでありました。